【壱号】
「……その女、なに」

突如、背後から聞こえた声。
それに驚いて振りかえる。

するとそこには、いつの間にか一人の少年が立っていた。


【晴明】
「話してあっただろう。コイツが参号だ」

そんなわたしをちらりと一瞥すると、晴明様は至極普通に、少年に話しかけた。

【壱号】
「……ふぅん。コイツがね」

――ほんの、一瞬。
少年の姿が、赤く輝く焔(ほのお)そのものに見えた。

【彩雪】
「あ、あの……」

銅(あかがね)の髪と同じ色をした、夜の闇を照らす瞳。
その奥では、意思の固さを秘めた炎がゆらりと揺れている。

これは、子供から大人に成長する間のほんの一瞬。

美しくて不可思議なその瞬間を切り取った姿なのだと、頭のどこかで理解した。

【壱号】
「……式神を増やすのは晴明の勝手だけど。世話を押し付けられる、こちらの身にもなって欲しいね」